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広大地の判定単位と土地の評価単位は一致するのか?

第1 まえがき 広大地の判定単位と原則的な評価単位

 

広大地の適用要件では・・・・、周知のとおり1,000㎡(又は500㎡)以上の地積が必要です。

しかし、財産評価基本通達7に代表される土地の評価単位(地目別評価の原則)を適用した場合、土地の地目によって広大地の面積要件を充足する場合と面積が足りずに広大地として認められない、すなわち広大地補正率が適用できない場合に分かれるケースがあります。

正しい評価単位の判定は正しい土地価額の算定に不可欠な作業であり、土地評価の原点といえます。

評価単位の正確な判定は、適正な相続税額の算定に直結するのみならず広大地の適用が可能か否かを判断する重要な作業なのです。

本稿では、広大地の判定する場合の単位と土地の評価単位(地目別評価の原則)と一致しなければならないのか?について考察してみましょう。

 

 

■ 関連情報 ■ 広大地の適用3要件とは?

 

第2 土地の評価単位は?

 

まず、広大地の判定単位を検討する前に、原則となる土地の評価単位についておさらいしましょう。

土地評価では、地目の区分に応じて宅地、田、山林、雑種地は区分して評価するのが原則です。

従って、一筆の土地の中で宅地、田、畑、山林、雑種地が混在している場合、その地目ごとに評価単位を分けます。

では、広大地の判定単位についてはどうなるのでしょうか?

各地目ごとの宅地、畑のみでは500㎡に足りず、広大地にはならないのか?

他方、広大地の面積要件に足りない場合であっても、評価単位の例外により2以上の地目を一団の評価単位とする場合には広大地に該当する可能性があるのか?などなど

広大地の評価において評価単位の判定は非常に重要です。

以下、原則の土地の評価単位について見ていきましょう!

 

 

1.原則である地目別評価

土地の価格は「原則として地目の別」に評価します。「地目」といっても公簿地目、現況地目、課税地目など様々な種類の地目がありますが、土地(財産)評価では課税時期における現況地目の判定を行う必要があります。

地目は以下の(1)宅地(2)田(3)畑(4)山林(5)原野(6)牧場(7)池沼(8)鉱泉地(9)雑種地の9区分に分類され、具体的な地目判定は不動産登記事務取扱手続準則第68条(地目)及び69条(地目の認定)に準じて行います。

土地評価では、地目の区分に応じて宅地、田、山林、雑種地は区分して評価するのが原則です。

しかし、この考え方は税務特有の考え方で、一般的に土地を売買する単位と異なるケースも多々あります。

土地評価ではこの「税務特有」の規定を十分に理解し、多角的な視点から評価単位の判定が行える専門知識が必要となります。

 

■ 関連情報 ■
「評価単位の判定」についてはこちら
「広大地実例 3 複数の地目からなる一筆の土地における広大地」についてはこちら

 

2.地目別評価の例外①

原則があれば、当然例外もあります。

すなわち宅地、畑など異なる地目であっても一つの評価単位とするケースです。

 

例:ゴルフ練習場、大規模工場など

 

ゴルフ練習場が以下の地目で構成されているとします。

受付、休憩所がある建物敷地部分(地目:宅地A)

ドライビングレンジ(ネットが張られた部分)(地目:雑種地B)

本来的には、宅地Aと雑種地Bは地目が異なるため、それぞれ別々の評価単位となるのが原則です。しかし、地目別評価の原則にかたくなに従うと、ゴルフ練習場と一体利用されていることによる効用が評価額に反映されません。

このため実態に即するようABがゴルフ練習場として一体利用されている場合には、その一部に建物があっても建物敷地以外の目的による土地(雑種地)の利用を主としていると認められることから、その全体が雑種地からなるものとして雑種地の評価方法に準じて評価します。

詳細は以下の関連情報をご参照下さい。

 

■ 関連情報 ■
「ゴルフ練習場の評価単位(地目別評価の例外について)」についてはこちら
「ゴルフ練習場の評価単位(ケーススタディ1)についてはこちら
「ゴルフ練習場の評価単位(ケーススタディ2)についてはこちら

 

3.地目別評価の例外② 宅地以外田・畑・山林・雑種地を一体評価

この規定は広大地判定に影響を与える重要な例外規定であり、評価額に大きな影響を与えます。

もう少し厳密にいうと 「主として市街化区域において、市街地野農地、市街地山林、市街地原野及び宅地と状況が類似する雑種地のいずれか2以上の地目が隣接している場合で、全体 を一団として評価することが合理的と認められる場合」には、たとえ地目が異なる土地であっても全体を一団の土地として評価することになります。

 

例:市街化区域の駐車場(雑種地)と畑など

 

具体的に雑種地、畑、山林など地目が異なっても一体評価するケースについて考えてみましょう。

 

事例①の場合

A:雑種地

標準的な宅地規模を考えた場合には地積が小さい

 

B:畑

不整形であるため形状を考えた場合には、単独で評価するのではなくAと合わせて評価するのが妥当

 

C:山林

無道路地であるため位置を考えた場合には、単独で評価するのは妥当でないと認められる。

 

以上より地目は異なるがA、B及びC土地全体を一団の土地として評価します。

 

このような場合には、土地取引の実情からみても隣接の地目を含めて一団の土地を構成しているものと判断するのが妥当であることから、全体を一団の土地として評価します。

また、このように全体を一団の土地として評価するときに、その一団の土地がその地域における標準的な宅地の地積に比例して著しく広大となる場合には、広大地規定{財産評価基本通達24-4、同40-2、同49-2及び同58-4)を適用可能です。

 

 

4.利用単位の判定

土地評価では地目による分類に加え、以下の利用単位の判定が必要です。

宅地の価額は利用の単位ごとに評価します。

 

(1) 自用地については居住用か事業用を問わず1画地認定

(2) 自用地と借地権設定地(底地)はそれぞれ1画地認定(2単位)

(3) 貸家建付地、自用地の場合にもそれぞれ1画地認定(2単位)

(4) 底地、貸家建付地は、それぞれの部分を1画地認定(2単位)

(5) 底地は、借地人ごとに1画地認定

(6) 貸家が数棟ある貸家建付地は、原則として各棟の敷地ごとに1画地認定

(7) 借地権はその全体を1画地認定。貸宅地の評価に当たっては、各地主分ごとに区分して、それぞれを1画地認定

(8) 共同ビルの敷地の用に供されている宅地は、その全体を1画地認定

 

なお、相続、遺贈又は贈与により取得した宅地については、原則として、取得者が取得した宅地ごとに判定します

(不合理分割を除く)。これらの考え方は税務特有の考え方です。

広大地判定においてもこの「税務特有」の規定を十分に理解し、多角的な視点から評価単位の判定が行える専門知識が必要となります。

 

評価単位の判定は適正な広大地判定を行うための第一歩と言える重要な作業です。

 

■ 関連情報 ■ 「意外と難しい土地の評価単位(宅地編)」について

 

第3 広大地の判定評価は?

 

では、広大地の判定単位は原則通り地目別評価を行う必要があるのでしょうか?

 

答えはYESなのです。

 

例え、広大地であっても原則の地目別評価と上記に2例外をもって判定単位とすることに変わりは無いのです!

広大地の判定単位の判定と土地評価における評価単位の判定は一致しますし、また原則的な評価単位の判定及び2つの例外についても税務特有の考え方なのです。

 

この部分を理解していない不動産鑑定士は実は多いのです・・・

不動団鑑定評価基準による「最有効使用の原則」を掲げ、地目が異なる土地についても、売却する時には宅地と隣接する畑を一体的に売却することが最有効使用であるから、広大地判定の単位も最有効使用の原則にのっとり一体として判定すべきとの持論を展開したりします、がそれは間違いなのです・・・

 

これまで広大地の判定単位と評価単位について争った裁決事例のほとんどが、広大地の判定単位と財産評価の評価単位は一致するとの考えに立脚しており、地目別単位と利用単位に加え取得者単位を勘案して広大地の評価単位を判定する必要があるのです。当然不合理分割についても同様です。

 

広大地の適用が可能かどうかは「現実の利用状況に着目した評価単位」すなわち「財産評価基本通達に規定する評価単位」をもって判定することになります。

 

例えば、同じ宅地であっても自用地と貸家建付地は別評価となります。

例えば800㎡の宅地について、相続発生時において半分は自用地、残りを貸家建付地として利用していた場合、評価単位が2単位となります。(利用単位別)これにより800㎡の宅地については広大地の面積要件を満たしていても、自用地と貸家建付地のそれぞれの評価単位面積は400㎡づつとなるため開発許可面積500㎡を下回り、結果広大地の適用が受けられない場合も多々あるのです。

 

 

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広大地の評価単位について最有効使用の原則を基礎とする評価単位は採用すべきでない。広大地の評価単位は財産評価基本通達の評価単位「地目別、利用単位別」の評価単位が原則である!

 

第4 広大地の判定単位について例外は?

 

原則があれば当然例外もあります。

広大地判定においても上記の財産評価基本通達7に従って判定単位を決めることが原則なのですが・・・・

 

例外的に財産評価基本通達に定めれた方法以外で単位を判定できる場合があります。

それは、「特別な事情の有無」がポイントになります。

 

すなわち、財産評価基本通達は統一的な基準をもって相続税にかかる財産の評価を行うことで課税の公平性、統一性を図ることを趣旨とするものであるため、当然 通達が想定していない「特別の事情」がある場合には評価通達に依らない方法によって広大地の判定単位を決定することは可能なのです。

 

なお、「特別な事情」とは最有効使用の観点から宅地と隣接する畑を一体的に売却すること合理的である!といった現実の利用方法を超えた事情は認められません。あくまで想定外の特別な事情が必要なのです。

 

この部分について争った裁決事例を目にしますが・・・・殆ど認められないと状況です。

従って、「広大地の判定単位は土地の評価単位に一致する」ことが現在の流れなのです!

 

 

 

第5 評価地目について財産評価基本通達の抜粋

 

(土地の評価上の区分)

 

7 土地の価額は、次に掲げる地目の別に評価する。ただし、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとする。

なお、市街化調整区域(都市計画法(昭和43年法律第100号)第7条((区域区分))第3項に規定する「市街化調整区域」をいう。以下同じ。)以外の都 市計画区域(同法第4条((定義))第2項に規定する「都市計画区域」をいう。以下同じ。)で市街地的形態を形成する地域において、40((市街地農地の 評価))の本文の定めにより評価する市街地農地(40-3((生産緑地の評価))に定める生産緑地を除く。)、40-2((広大な市街地農地等の評価)) の本文の定めにより評価する市街地農地(40-3に定める生産緑地を除く。)、49((市街地山林の評価))の本文の定めにより評価する市街地山林、 49-2((広大な市街地山林の評価))の本文の定めにより評価する市街地山林、58-3((市街地原野の評価))の本文の定めにより評価する市街地原 野、58-4((広大な市街地原野の評価))の本文の定めにより評価する市街地原野又は82((雑種地の評価))の本文の定めにより評価する宅地と状況が 類似する雑種地のいずれか2以上の地目の土地が隣接しており、その形状、地積の大小、位置等からみてこれらを一団として評価することが合理的と認められる 場合には、その一団の土地ごとに評価するものとする。

地目は、課税時期の現況によって判定する。(昭47 直資3-16・平3課評2-4外・平11課評2-12外・平16課評2-7外・平18課評2-27外改正)

 

(1) 宅地

(2) 田

(3) 畑

(4) 山林

(5) 原野

(6) 牧場

(7) 池沼

(8) 削除

(9) 鉱泉地

(10) 雑種地

 

(注)  地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付民二第456号法務省民事局長通達)第68条及び第69条に準じて行う。ただし、 「(4)山林」には、同準則第68条の「(20)保安林」を含み、また「(10)雑種地」には、同準則第68条の「(12)墓地」から「(23)雑種地」 まで(「(20)保安林」を除く。)に掲げるものを含む。

(評価単位)

 

7-2 土地の価額は、次に掲げる評価単位ごとに評価することとし、土地の上に存する権利についても同様とする。(平11課評2-12外追加・平16課評2-7外改正)

 

(1) 宅地

 

宅地は、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。以下同じ。)を評価単位とする。

(注) 贈与、遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われた場合において、例えば、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地を「1画地の宅地」とする。

 

 

広大地 東京

 

 

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