時価申告として採用されない鑑定評価書とは?
鑑定評価書があれば時価申告は大丈夫??
相続関連の仕事をしていると、色々な方と接する機会があります。
他士業の先生方だけではなく、法人の経理・総務担当者や地主・相続人の方など様々ですが・・・・
その様な方々と色々情報交換を行う機会が多くありますが、
その時に良く耳にするのが・・・・・・
- 「不動産鑑定士が書いた鑑定評価書があるから大丈夫ですよね???」
という確認?です。
これは・・・・・
「例えば自分が運悪く癌を患ってしまった時に、医者に診てもらったから大丈夫」
と言っているようなものです。
何故なら、医者には内科、外科、歯科などそれぞれの専門分野があります。
また同じ外科でも、その分野はさらに専門的に特化した分野があります。
それは我々不動産鑑定士も同じなのです。
すなわち、不動産鑑定士が書く「不動産鑑定評価書」は、それぞれ対象不動産の価値を貨幣価値として
表現されますが・・・
必ずしも依頼者の求めている(指標として用いるべき)時価とは限らないのです。
なぜ、そのような事が起こるのでしょうか?
そもそも求めるべき時価の意味を理解していない?
これは不動産鑑定士に限らず資格者に多くみられる傾向ですが・・・・・
自分の領域以外の事はあまり理解しようとしない事に起因するケースが多い気がします。
もちろん、相手の立場や領域を十分理解しつつ業務を行える先生方も沢山見えますが・・・・
不動産鑑定士の場合、例えば税理士、会計士の先生方から時価評価の依頼を頂く場合に、なぜその評価
が必要なのか?その背景を十分に理解しなければなりません。
実は、これを実践するには相当の勉強と経験が必要です。
時には、より良い方法を提案したり、軌道修正を提案する事も必要です。
一言に時価と言っても、案件によって求めるべき時価の指標は異なるのです。
それを十分理解するには・・・・
- 憲 法
- 民 法
- 税 法(相続税・法人税・所得税)
- 通達・情報・事務連絡など
をはじめとする横断的な知識と「不動産鑑定評価における時価」の概念がリンクする必要があります。
不動産鑑定士は法律と通達・情報・事務連絡の位置付け、実務上の拘束性を十分理解し、時価評価を通
じて依頼者と税理(会計)士先生の橋渡しが出来なければいけないのです。
時価申告として採用されない典型例
代表的なケースとして以下の4つがあげられます。
- ケース1 「正常価格」以外の価格を求めている場合
- ケース2 価格時点が相続開始日と異なる場合
- ケース3 鑑定評価における評価単位と土地評価の評価単位が異なる場合
- ケース4 鑑定評価基準による手順・評価手法を順守していない場合
特にケース3は財産評価基本通達と鑑定評価基準による差が顕著に表われるケースです。
せっかく依頼した鑑定評価書が、意図しないものであったら・・・・・
ましてや使い物にならない評価書であった場合には・・・・・
税理(会計)士先生の信頼にかかわる由々しき事態となりかねません。