第1 はじめに
前回、広大地について紛争当事者となった場合の留意点について書きましたが、何故、広大地判定をめぐって更正の請求や紛争が起きるのか・・・・・現在の広大地規定に改正された過去からの経緯をここで理解しましょう。
第2 広大地評価の誕生から現在までの改正経緯
広大地の歴史とその時代背景を簡単にまとめてみました。
まず、広大地規定の基礎となった通達として「昭和55年 東京局の個別通達」があります。
1.昭和55年 東京局個別通達 (広大地の先祖?)
この規定は面積が1,000㎡以上でかつ周りの土地の5倍以上の大きな土地について△10%を認めるものでした。
いわゆる広大地の第一世代です。
当時は財産評価基本通達の全国的な統一が行われる前でしたので、東京管内のみ認められる限定的なものでした。
その後・・・・
- 平成3年のバブル経済の崩壊
- 時価と相続税時価の逆転現象が社会問題
- 平成4年の地価税導入
- 財産評価基本通達の全国的統一
平成3年にバブル経済の崩壊し、時価と相続税時価の逆転現象が社会問題となり、また平成4年の地価税導入を踏まえて財産評価基本通達の統一が行われました。
因みに地価税は現在運用停止中です。
2.平成 6年 広大地規定(有効宅地化率)の導入
全国的な統一基準にはじめて広大地が規定されたことになります。
いわゆる第二世代の広大地です。
有効宅地化率を導入した実務色の強いものでした。
このころ日本経済では以下の出来事が発生します。
- 平成9年の山一証券の自主廃業
- 平成10年の北海道拓殖銀行の経営破綻
- 地価の長期的下落
このため相続税の納税に際して「物納が急増」することになります。
3.平成12年 一部改正
ここでは従来、広大地の適用対象外とされてきた土地の高度利用可能性を実質的に判断することとし、従来、明文規定がなかった「開発行為」「公共公益的施設」の定義が明文化されました。
これにより、開発想定図を作成するより精緻な広大地評価が行われるようになりました。
4.平成16年 現在の広大地(第三世代)
実は第二世代の広大地規定は有効宅地化率の概念を導入したため、申告時に画地割の図面を書き、いわゆる「潰れ地」を実際に明示する必要がありました・・・
これは申告する側も大変ですが、もっと大変なのは課税庁です。
1つずつ広大地に該当するか?開発指導要綱に適合した開発計画か?を判断する必要があるわけです。
また急増する物納件数を抑制する必要も生じました。
そこで個人的意見ではありますが、徴税費用の節減と物納件数の抑制のため「第三世代」の広大地規定が平成16年に設けられたと考えています。
現在の広大地規定の特徴は、先に述べた通りです。
しかし、ここで新たな問題が発生しました。
確かに計算は非常に簡単になりましたが、反面、広大地に該当するか否かの判断が非常に難しくなったのです。
それゆえ最近、広大地に関するトラブル・紛争が多発しているのです・・・・
5.平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号
上記の広大地の通達改正とは別に改正後の広大地評価について補足説明が行われました。
いわゆる「16年情報」と呼ばれている「平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号」です。
6.平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号
「16年情報」から約1年足らずで追加の情報が公表されました。
いわゆる「17年情報」と呼ばれているものです。
16年情報の更なる考え方の統一と例示を具体的に例示しています。当時、如何に運用に混乱が生じたかが伺える経緯です。
7.まとめ
現在の広大地規定についてまとめると・・・・
- H16広大地規定は計算が簡便化された反面、適用可能か否かの判断が困難
- 適用可能であれば評価額は非常に低くなるため色々と影響が大きい
- 第三世代の広大地と平成18年の物納制度の厳格化により、以降の物納は激減
となります。
広大地として判定が困難がゆえに更正の請求や訴訟などの紛争が近年、多発しているのです。
第3 目次
- 1 広大地に関する紛争当事者となった場合の留意点
- 2 紛争が多発する広大地判定の歴史と沿革(本稿)
- 3 近年多発する広大地をめぐるトラブル
- 4 あらためて広大地適用の3要件について考えてみる
- 5 広大地判定に不可欠な開発行為への理解
- 6 広大地判定フローチャートとマンション適地の判定
- 7 相手方の広大地判定に関する意見書は恐れるに足らず!
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