遺産分割と土地の時価との関係
近年、遺産分割に関連して不動産鑑定を依頼されるケースが顕著に多くなりました。
そこで今回は遺産分割で鑑定評価が必要とされる具体的な事案をご紹介していきたいと思います。
遺産分割とは?
相続が発生し、
- 有効な遺言がない状態で・・・・
- 各々の相続人が相続放棄も限定承認をしないで3カ月が過ぎて・・・・
- 相続人が「単純承認」の状態になった場合・・・・
被相続人が死亡時に有していた一切の権利・義務を相続人が相続分に応じて共同相続することになります。
この遺産の共有状態を解消して、個々の財産を各相続人に分配し取得させる手続きが「遺産分割」 なのです。
遺産分割の方法
遺産を具体的に分割する方法には①現物分割②代償分割③換価分割に大別されます。
- 1現物分割とは・・・・
遺産をあるがままの姿で分割する方法で、遺産分割の原則的な方法といえます。
- 2代償分割とは・・・・
原則的な現物分割により財産を細分化したのでは遺産の価値が著しく失われる場合には、一人または数人の共同相続人にその者の相続分をこえる遺産を現物で取得させ、代わりに相続分に満たない遺産しか取得しない相続人に対する債務を負担させる分割方法です。
分かりやすくいうと、不動産を売却したと仮定して、その売買代金を基準に相続分を算定し、金銭の授受で不動産を分割することなく解決する方法なのです。
- 3換価分割とは・・・・
遺産を金銭に換価し、その価値を分割する方法です。
不動産鑑定が必要な分割方法は?
上記のうち不動産鑑定が必要となるケースは①と②と言って良いと思います。
①の現物分割は土地を実際に分筆するとなると色々な問題が生じます。
例えば一筆の土地を三人で現物分割する場合、例え面積が同じであっても・・・
間口、奥行の関係や接面状況などで単価に差が生じる場合が多いからです。
②の代償分割の場合には不動産の時価にスポットが当たってきますから、やはり鑑定評価を行って欲しいという依頼があります。
他方③の換価分割の場合は実際に売却した金額を相続人で分けるため鑑定評価が必要となるケースは殆どありません。
遺産分割に用いる時価は?
遺産分割の際の財産の評価は、分割の協議をする時点の時価(実勢価格)でするのが原則です。
しかしながら実際は相続税評価額や固定資産税評価額を基準とする場合もあります。
当事者間で合意が出来ればそれでも構わないのです。
しかし実際は・・・
特に代償分割の場合には不動産鑑定による時価を求められるケースが多いです。
なぜなら、代償金の多寡は不動産の時価次第であり、流動性の高い現金を望む相続人が鑑定評価を依頼するのは必然です。
問題点は?
鑑定評価額による分割を行う場合には特に以下の問題が発生します。
- 代償金の支払い能力
代償分割を行う場合には、不動産を分割・換金できない理由が存在するケースが多いのです。
例えば・・・・
長男が父の事業を引き継ぐ場合に、会社の事業所として使っている土地(相続財産)を換金したり、現物分割することが馴染みません。ましてや共有は論外です。
仕方なく長男は代償分割を提案する事になるのですが・・・・・
鑑定評価額は相続税評価額よりも高い水準になるケースが多いので、長男に代償金の支払能力がなければ解決にならない恐れもあるのです。
こういった場合には鑑定評価額を基準に両者が話し合い、互いに歩み寄る姿勢も大切です。