第1 はじめに
近年は広大地か否かについて、愛知県や名古屋市などの中部圏のみならず、全国の税理士先生から広大地判定のご依頼を頂くようになりました。大変有り難いことです。
なかでも首都圏の依頼はここ数年で相当増加しました。
全国からの広大地評価に対応するためには、机上調査の初期段階で広大地が所在する市町村に応じて広大地の適用要件である面積基準を確定する必要があります。
広大地が市街化区域に所在する場合、当該広大地が三大都市圏に含まれているか、言い換えれば500㎡以上で広大地が適用できるのか?を早い段階で見極める必要があるのです。
本稿では広大地の適用要件である面積要件について、三大都市圏の市街化区域について詳しく書いていきます。
1.広大地規定における三大都市圏とは?
広大地判定を行う場合の三大都市圏とは、次の地域をいいます。
①首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯
②近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域
③中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
これら既成市街地、近郊整備地帯、既成都市区域、近郊整備区域、都市整備区域に規定された市町村の市街化区域に広大地が所在する場合、500㎡以上で広大地適用の要件を満たすことになります。
2.広大地判定における首都圏とは?
広大地判定における三大都市圏のうち首都圏とは・・・・
東京都の23区及び埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県及び山梨県の区域
を意味します。(首都圏整備法第2条及び同施行令第1条より)
3.広大地における首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地とは?
では、前記第1-1①の首都圏整備法第2条第3項について調べてみましょう。
首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地とは同施行令第2条より東京都の特別区の存する区域及び武蔵野市の区域並びに三鷹市、横浜市、川崎市及び川口市の区域のうち別表に掲げる区域を除く区域となります。
なお、別表については文末をご参照下さい。
4.広大地における首都圏整備法第2条第4項に規定する近郊整備地帯とは?
次ぎに、前記第1-1①の首都圏整備法第2条第4項について調べてみましょう。
首都圏整備法第2条第4項に規定する近郊整備地帯とは・・・・・・・
首都圏整備法(昭和31年法律第83号)第24条第1項の規定により指定された区域をいいます。
具体的には下記に挙げる市区町村となります。
5.500㎡以上で広大地の適用が認められる市区町村
首都圏(東京都及び埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県及び山梨県の区域)において広大地判定の依頼や広大地の机上判定について打診を受けた場合、弊社では同時に広大地が市街化区域に所在しているかを同時に確認し500㎡以上で広大地適用が可能かを即時に判定しています。
ただし、下記以外の市町村においても条例や開発指導要綱などによって市街化区域における1000㎡以下の宅地開発や300㎡以上の宅地開発について、事実上の開発指導や技術基準を求める自治体もあるので、最終的には各市町村の担当部署へ個別に確認する必要があります。
(1)既成市街地(1特別区5市)
【東京都】
特別区、武蔵野市、三鷹市
【埼玉県】
川口市
【神奈川県】
横浜市、川崎市
(2)近郊整備地帯(111市28町)
【東京都】
八王子市、立川市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、 国分寺市、国立市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村市、あきる野市、西東京市瑞穂町、日の出町(25市2町)
【埼玉県】
さいたま市、川越市、熊谷市、川口市、行田市、所沢市、飯能市、加須市、東松山市、春日部市、狭山市、羽生市、鴻巣市、上尾市草加市、越谷市、蕨市、戸田市、入間市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、富士見市、三郷市蓮田市、坂戸市、幸手市、鶴ヶ島市、日高市、吉川市、ふじみ野市、白岡市、伊奈町、三芳町、毛呂山町、越生町、滑川町、嵐山町川島町、吉見町、鳩山町、宮代町、杉戸町、松伏町(37市12町)
【千葉県】
千葉市、市川市、船橋市、木更津市、松戸市、野田市、成田市、佐倉市、習志野市、柏市、市原市、流山市、八千代市、我孫子市鎌ヶ谷市、君津市、富津市、浦安市、四街道市、袖ヶ浦市、印西市白井市、富里市、酒々井町、栄町(23市2町)
【神奈川県】
横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、三浦市、秦野市、厚木市、大和市、伊勢原市、海老名市、座間市、南足柄市、綾瀬市、葉山町、寒川町、大磯町、二宮町、中井町、大井町、松田町、開成町、愛川町(19市9町)
【茨城県】
龍ヶ崎市、常総市、取手市、牛久市、守谷市、坂東市、つくばみらい市、五霞町、境町、利根町(7市3町)
注)アンダーラインを引いた市町村は行政区域の一部が区域指定に係るものである(市町村合併による行政区画の変更以外の軽微な変更については考慮していない)
上記の市区町村のうち「市街化区域」については500㎡を広大地の判断基準とします。
他方、広大地が上記市町村以外の市街化区域に所在する場合には1,000㎡以上か否かによって広大地を適用可能か判断する必要があります。また首都圏においては300㎡にまで開発許可面積が引き下げれている市区町村もあるため必ず担当部署へ個別に確認することが必要です。
広大地判定のキーワード!
「市街化区域」+「既成市街地及び近郊整備地帯に規定された市町村」
= 500㎡以上で広大地
となる!
但し例外ありです。
三大都市圏の範囲については非常にリクエストが多かったため、弊社で三大都市圏に該当するかをすぐに判定できる地図アプリケーションを作成しました。是非ご利用ください。(2019年3月28日付)
■ フルサイトはこちら ■
■操作方法はこちら■
三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)の範囲がすぐわかる
すべての三大都市圏に該当する範囲(WEBアプリケーション)
弊社が税理士先生へ無料提供している地図データで上記の広大地判定のキーワードである・・・
既成市街地に規定された市区町村がピンク色の枠で囲われた市区町村となります。
近郊整備地帯に規定された市区町村がブルーの枠で囲われた市区町村です。
また、市街化区域がピンク色で塗りつぶされた部分になります。
したがってピンク色で塗られた部分に広大地があれば、500㎡以上で広大地となる可能性が出てきます!
ただし、300㎡以上でも該当する場合があるなど例外に注意が必要です。
7.300㎡以上で広大地が可能な地域と1,000㎡以上適用できる非線引都市計画区域
300㎡以上で広大地が適用可能な千葉県流山市、我孫子市(いづれも市街化区域のみ)については橙色で表示しています。1,000㎡以上で広大地が適用できる非線引都市計画区域の地域として千葉県の成田市、八街市、山武市、多子町、横芝光町については空色で表示しました。
8.使用した土地情報データについて
広大地が500㎡以上で適用される市街化区域の範囲を表示する場合に使用した「土地情報データ」は以下のとおりです。弊社では全国の広大地判定に有用なデータを整備し、相続税の申告業務を行う税理士先生へ提供しています。
- 行政区域(全国)データ
- 政策区域(首都圏)データ
- 既成市街地及び近郊整備地帯(首都圏)データ
- 市街化区域(東京都・神奈川県・千葉県など)データ
第2 国税庁の質疑応答事例における広大地の面積基準は?
国税庁によれば、広大地の評価における「著しく地積が広大」であるかどうかの判断について以下の回答がなされています。【以下、国税庁HPを引用】
【回答要旨】
評価対象地が都市計画法施行令第19条第1項及び第2項の規定に基づき各自治体の定める開発許可を要する面積基準(以下「開発許可面積基準」といいます。)以上であれば、原則として、その地域の標準的な宅地に比して著しく地積が広大であると判断することができます。
なお、評価対象地の地積が開発許可面積基準以上であっても、その地域の標準的な宅地の地積と同規模である場合は、広大地に該当しません。
[面積基準]
イ 市街化区域、非線引き都市計画区域及び準都市計画区域(ロに該当するものを除く。) ・・・都市計画法
施行令第19条第1項及び第2項に定める面積(※)
(イ)市街化区域
三大都市圏 → 500平方メートル
それ以外の地域 → 1,000平方メートル
(ロ)非線引き都市計画区域及び準都市計画区域 → 3,000平方メートル
ロ 非線引き都市計画区域及び準都市計画区域のうち、用途地域が定められている区域
→ 市街化区域に準じた面積
(注) 1 都道府県等の条例により、開発許可面積基準を別に定めている場合はその面積によります。
2 三大都市圏とは、次の地域をいいます。
①首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯
②近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域
③中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
3 「非線引き都市計画区域」とは、市街化区域と市街化調整区域の区域区分が行われていない都
市計画区域をいいます。
4 「準都市計画区域」とは、都市計画区域に準じた規制が行われ、開発許可制度を適用し、用途
地域、特定用途制限地域、風致地区などを定めることができる都市計画区域外の区域をいいます。
第3 首都圏整備法と首都圏整備法施行令の抜粋
全国で広大地判定の依頼を受けるには、首都圏、近畿圏、中部圏の開発整備法にも精通する必要があります。
本稿では首都圏における広大地の面積基準に関連する首都圏整備法と首都圏整備法施行令について見ていきましょう!
首都圏整備法とは?
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、首都圏の整備に関する総合的な計画を策定し、その実施を推進することにより、わが国の政治、経済、文化等の中心としてふさわしい首都圏の建設とその秩序ある発展を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「首都圏」とは、東京都の区域及び政令で定めるその周辺の地域を一体とした広域をいう。
2 この法律で「首都圏整備計画」とは、首都圏の建設とその秩序ある発展を図るため必要な首都圏の整備に関する計画をいう。
3 この法律で「既成市街地」とは、東京都及びこれと連接する枢要な都市を含む区域のうち、産業及び人口の過度の集中を防止し、かつ、都市の機能の維持及び増進を図る必要がある市街地の区域で、政令で定めるものをいう。
4 この法律で「近郊整備地帯」とは、既成市街地の近郊で、第二十四条第一項の規定により指定された区域をいう。
(省略)
(近郊整備地帯の指定)
第二十四条 国土交通大臣は、既成市街地の近郊で、その無秩序な市街地化を防止するため、計画的に市街地を整備し、あわせて緑地を保全する必要がある区域を近郊整備地帯として指定することができる。
首都圏整備法施行令とは?
(東京都の区域の周辺の地域)
第一条 首都圏整備法 (以下「法」という。)第二条第一項 の政令で定めるその周辺の地域は、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県及び山梨県の区域とする。
(既成市街地の区域)
第二条 法第二条第三項 の政令で定める市街地の区域は、東京都の特別区の存する区域及び武蔵野市の区域並びに三鷹市、横浜市、川崎市及び川口市の区域のうち別表に掲げる区域を除く区域とする。
(省略)
別表
【三鷹市】
北野一丁目から四丁目まで、新川一丁目、中原一丁目、二丁目及び四丁目並びに大沢二丁目から六丁目までの区域並びに新川四丁目、中原三丁目及び大沢一丁目のうちそれぞれ国土交通大臣が定める区域
【横浜市】
神奈川区:(菅田町及び羽沢町のうちそれぞれ国土交通大臣が定める区域)
港南区:(野庭町及び日野町のうちそれぞれ国土交通大臣が定める区域)
保土ケ谷区:(新井町及び上菅田町の区域並びに今井町のうち国土交通大臣が定める区域)
旭区:(今宿西町、大池町、金が谷、上川井町、上白根町、川井宿町、川井本町、桐が作、笹野台、下川井町、善部町、都岡町、中尾町、中希望が丘、東希望が丘、南希望が丘及び矢指町の区域並びに今川町、今宿町、今宿東町、柏町、さちが丘、白根町、中沢町、二俣川一丁目及び南本宿町のうちそれぞれ国土交通大臣が定める区域)
磯子区:(氷取沢町及び峰町の区域並びに上中里町及び栗木町のうちそれぞれ国土交通大臣が定める区域)
金沢区:(野島町の区域並びに朝比奈町、乙艫町、釜利谷町及び六浦町のうちそれぞれ国土交通大臣が定める区域)
港北区:(牛久保町、大棚町、勝田町、北山田町、すみれが丘、茅ケ崎町、中川町、東山田町及び南山田町の区域並びに新吉田町及び新羽町のうちそれぞれ国土交通大臣が定める区域)
緑区:(青砥町、青葉台一丁目及び二丁目、市ケ尾町、美しが丘一丁目から五丁目まで、梅が丘、荏田町、榎が丘、大熊町、大場町、折本町、恩田町、上山町、上谷本町、鴨志田町、川和町、北八朔町、鉄町、黒須田町、小山町、桜台、さつきが丘、寺家町、下谷本町、しらとり台、台村町、田奈町、たちばな台一丁目及び二丁目、千草台、つつじが丘、寺山町、十日市場町、長津田町、中山町、奈良町、成合町、新治町、西八朔町、白山町、藤が丘一丁目及び二丁目、松風台、三保町、もえぎ野、元石川町並びに若草台の区域並びに池辺町、鴨居町、川向町、佐江戸町及び東方町のうちそれぞれ国土交通大臣が定める区域)
戸塚区:(飯島町、和泉町、岡津町、影取町、笠間町、鍛治ケ谷町、桂町、金井町、上飯田町、上郷町、公田町、小菅ケ谷町、小雀町、下飯田町、新橋町、田谷町、長尾台町、中野町、原宿町、東俣野町、深谷町及び俣野町の区域並びに上矢部町、川上町、汲沢町、品濃町、下倉田町、戸塚町、中田町、長沼町及び名瀬町のうちそれぞれ国土交通大臣が定める区域)
瀬谷区
【川崎市】
高津区:(鷺沼二丁目及び四丁目の区域並びに菅生、平、長尾、向ケ丘、土橋、有馬、野川、宮崎、鷺沼一丁目及び三丁目並びに久末のうちそれぞれ内国土交通大臣が定める区域)
多摩区:(寺尾台一丁目及び二丁目、三田一丁目から五丁目まで、高石、百合丘一丁目から三丁目まで、細山、千代ケ丘一丁目から七丁目まで、金程、上麻生、片平、五力田、古沢、万福寺、栗木、黒川、下麻生、王禅寺、早野並びに岡上の区域並びに菅、上布田、登戸、宿河原及び生田のうちそれぞれ内国土交通大臣が定める区域)
【川口市】
上青木町二丁目から五丁目まで、前川町一丁目から四丁目まで、赤井、東本郷、蓮沼、江戸袋、前野宿、東貝塚、大竹、峯、新堀、榛松、根岸、在家、道合、神戸、木曾呂、東内野、源左衛門新田、石神、赤芝新田、西新井宿、新井宿、赤山、芝中田町一丁目及び二丁目、芝新町、芝、伊刈、柳崎、小谷場、安行原、安行領家、安行慈林、安行、安行吉岡、安行藤八、安行吉蔵、安行北谷、安行小山、安行西立野、戸塚、西立野、長蔵新田、久左衛門新田、藤兵衛新田、行衛並びに差間の区域
備考 この表に掲げる区域は、それぞれ昭和四十七年九月一日における行政区画その他の区域によつて表示されたものとする。