「庭内神し(ていないしんし)」の敷地等が非課税に!その敷地部分の具体的な特定方法とは?
平成24年6月21日の東京地方裁判所 平成22年(行ウ)第494号 の確定判決を受けて庭内神しの敷地等に係る相続税の非課税規定の取扱いが変更となり、その内容が国税庁HPの相続税・贈与税質疑応答事例において公表されています。
今回はこの「庭内神し」の敷地には・・・
- 1 敷地とは具体的にどの範囲が含まれるのか?
- 2 実務上はどのように敷地の面積を判断するのか?
について掘り下げてみたいと思います。
庭内神しとは?
まず、そもそも「庭内神し」とは、一般に、屋敷内にある神の社や祠等といったご神体を祀り日常礼拝の用に供しているものをいい、ご神体とは不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷等で特定の者又は地域住民等の信仰の対象とされています。
相続税法第12条第1項第2号の相続税の非課税規定の適用対象とは?
相続税法12条1項2号において「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」は非課税財産として規定されており、墓所、霊びょうの範囲には、墓地、墓石等のほか、その敷地も含まれると定められています(相基通12-1)。
そして、「これらに準ずるもの」とは、庭内神し、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものをいい、商品、骨とう品又は投資の対象として所有するものは含まれないと定められています(相基通12-2)。
従前における「庭内神し」とその敷地の取扱い
従前は「庭内神し」とその敷地とは別個のものであり、庭内神しの移動可能性を考慮すれば、その敷地が当然に「これらに準ずるもの」に含まれ非課税財産であるという取扱いはされていませんでした。
他方、墓所等は、その敷地までをも含めて非課税とされてきました。
民法上は、墳墓とは墓石、墓碑、墓標等を意味し、その敷地は墳墓そのものではない、すなわち庭内紳しと酷似しているにも関わらず、相続税法においては墓所等は非課税となっていました。
しかし、確定判決を受け庭内神しの敷地が非課税となりました。
確かに庭内神しの敷地自体はさして大きくはないのですが、注目すべきは、周辺の地元住民だけではなく、「特定の者」すなわち一族のみの祀りの対象までもが庭内神し及びその敷地として認められた点にあります。
庭内神しの敷地等に係る相続税の非課税規定の取扱いの変更について/国税庁HPより
平成24年7月
国 税 庁
「庭内神し」の敷地等に係る相続税法第12条第1項第2号の相続税の非課税規定の取扱いの変更について
○ 「庭内神し」の敷地については、「庭内神し」とその敷地とは別個のものであり、相続税法第12条第1項第2号の相続税の非課税規定の適用対象とはならないものと取り扱ってきました。しかし、
① 庭内神しの設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外 形や
② その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的、
③ 現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能の面から
その設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合には、その敷地及び附属設備は、その設備と一体の物として相続税法第12条第1項第2号の相続税の非課税規定の適用対象となるものとして取り扱うことに改めました。
(注) 「庭内神し」とは、一般に、屋敷内にある神の社や祠等といったご神体を祀り日常礼拝の用に供しているものをいい、ご神体とは不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷等で特定の者又は地域住民等の信仰の対象とされているものをいいます。
○ この変更後の取扱いは、既に相続税の申告をされた方であっても、相続した土地の中に変更後の取扱いの対象となるものがある場合には適用があります。
(注) 法定申告期限等から既に5年を経過している年分の相続税については、法令上、減額できないこととされていますのでご注意ください。
具体的な庭内神しの敷地の範囲とは?
判決を引用すると・・・・
「確かに、庭内神しとその敷地とは別個のものであり、庭内神しの移動可能性も考慮すれば、敷地が当然に「これらに準ずるもの」に含まれるということはできない。しかし、説示した本件非課税規定の趣旨並びに「墓所」及び「霊びょう」の解釈等に鑑みれば、庭内神しの敷地のように庭内神し等の設備そのものとは別個のものであっても、そのことのみを理由としてこれを一律に「これらに準ずるもの」から排除するのは相当ではなく、当該設備とその敷地、附属設備との位置 関係や当該設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形や、当該設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的、現在の礼拝の態様等も踏まえた上での当該設備及び附属設備等の機能の面から、当該設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備も当該設備と一体の物として「これらに準ずるもの」に含まれるものと解すべきである。」
と判示しています。
そして本件の事案は・・・
- 1 敷地が外形上、小さな神社の境内地の様相を呈していること
- 2 のぼりが本件敷地に立てられ、現に日常礼拝・祭祀の利用に直接供されていたこと
- 3 附属設備及び本件敷地を含め空間全体を使用して日常礼拝が行われていたこと
から、社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地ということができるため・・・非課税とされました。
従って、個別の事案に応じて敷地の範囲を確定することが重要となってきます。
庭内神しの敷地を具体的に確定する
現実的な方法としては航空写真や地形図をもとに、CADで面積を測定することではないでしょうか?
弊社では、航空写真、基盤地図情報、国土数値情報、国土地理院発行の地形図等を用いて、「庭内神し」の外形、実際の利用に即した、敷地部分を合理的に特定し、机上で実測可能です。
航空写真等を用いて面積を特定することはかなり説得力があり、作成される図面も下記のとおり、成果品として添付可能な机上実測図となっています。