共有物分割請求と鑑定評価(全面的価格賠償)-その2
共有物の分割方法
前回、共有不動産について話し合いで何ともならない場合には、「原則は現物分割ですが・・・」と書きましたが・・・
実は、共有物の分割方法には以下の方法があります。
- 1 現物分割
これは前回書きましたが、原則的な分割方法で、土地を分筆し分割した不動産をそれぞれ単独所有する形態です。
デメリットは分筆・登記費用がかかることと分割後の不動産の価値が減退することです。
- 2 代金分割
共有不動産を売却して、その売買代金を共有者で分ける方法です。
経済合理性がある分割方法ですが・・・・一人でも売却に反対していれば代金分割は実現できません。
- 3 価格賠償
代金分割と似ていますが、価格賠償では、共有者のどちらか一方の単有とし、他方には金銭などの財産的補償をする、すなわち相手方の持分を買い取る。これが価格賠償です。
全面的価格賠償とは?
全面的価格賠償とは・・・・
- 共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法
これを、全面的価格賠償といいます。
簡単にいえば資力に余裕がある場合の方法です。
実は・・・・
価格賠償は民法に規定が存在しないため、協議による分割の場合は「契約自由の原則」から認められるものの、裁判による分割の場合は認められないとされてきました。
しかし、近年は一定要件の下ではありますが、判例から全面的価格賠償が認められる流れとなっています。
分割全面的価格賠償が認められるには・・・・
民法258条は、現物分割が不可能又は現物で分割することによって著しく価格を損じるおそれがあるときは、競売による分割をすることができる旨を規定しています。
しかしながら、その趣旨は裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平、共有物の性質や状態に応じた分割が実現されることを期したものと考えられ、その分割方法を現物分割又は競売による分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されないのです・・・・
そうするであるならば・・・・・
- 共有物の性質及び形状
- 共有関係の発生原因
- 共有者の数及び持分の割合
- 共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値
- 分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無
等の事情を総合的に考慮し・・・・
- 当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められること
- 共有物の価格が適正に評価されていること
- 当該共有物を取得する者に支払能力があること
さらに・・・
共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するとき
に「全面的価格賠償」は認められます・・・・・
しかしながら・・・裁判手続きを経て、これだけのハードルをクリアーすることを考えると・・・・
やはり共有不動産のトラブルは任意の協議、交渉により解決するのが賢明です。
共有不動産のトラブルや単独所有の実現には共有解決を多く手掛ける弁護士先生の助力と鑑定評価書を利用する事をお勧めします・・・