知っておきたい広大地のキーポイント その6 広大地判定フローチャートとマンション適地の判定

第1 はじめに

 

これまで、広大地規定の沿革やトラブルが多発する理由、そして広大地に関し紛争当事者となった場合の留意点などについて書いてきました。

 

成功報酬で更正請求を行っていると思われる事案や結論ありきの訴訟など、もし税理士先生自身が広大地判定を巡りトラブルとなった場合に一番苦慮するのが・・・・・

 

評価対象地が「マンション適地」であったことを証明する必要がある場合なのです!

 

明らかに広大地に該当しないマンション適地と思われる土地についてまで、過失により広大地の規定を適用しなかった(忘れたのでは?)と主張してくるケースもままあるのです。

 

国税庁質疑応答事例「中高層の集合住宅等の敷地に適しているもの」における例示により、「評価対象地がマンション適地ではない」と証明する方がはるかにたやすいのです。

 

逆に、広大地か否かについて適用が微妙なケースについて評価対象地が「明らかにマンション適地」と判断されることを立証すれば、公共共益的施設の負担の要否にかかわらず、税理士先生が広大地を適用しなかったことの正当性を立証可能なのです。

 

平成16年の通達改正時に国税庁は資産評価企画官情報を公表し広大地判定フローチャートを例示することで混乱が生じないように配慮がなされました。「評価の統一性」及び「評価の簡便性」からも広大地判定フローチャートに従った判定は説得力が高く、裁判官に対する説明性にも優れています。

 

このため広大地判定フローチャートを用いて、評価対象地が「明らかにマンション適地」であることを立証できれば、その後の「著しく地積が広大か」「公共公益的施設用地の負担が必要か」どうかの判断を待たずに相手方を退ける事が出来るのです!

 

 

第2 広大地評価フローチャート

 

相続対象不動産が広大地の3要件に該当しているかを判定することが難しいことから、これを簡便に判定できるように国税庁から明示されたのが「広大地評価フローチャート」です。

 

広大地判定フローチャートは平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号及び平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号に例示された資料で、財産評価基本通達24-4の具体的な運用に際して広く用いられている資料であり、「評価の統一性」及び「評価の簡便性」からも広大地判定フローチャートに従った判定は説得力が高いといえます。

 

 

 1.平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号の広大地判定フローチャート

 

平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号のフローチャートにおける検討内容について、以下のとおりとなれば「評基通24-4の広大地に該当する」と判断できます。

 

 

      •  「大規模工場用地に該当するか」         → 該当しない (No)
      •  「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているか」 → 適していない(No)
      •  「著しく地積が広大か」             → 広大である (YES)
      •  「公共公益的施設用地の負担が必要か」      → 必要である (YES)
      •    評基通24-4の「広大地」に該当

 

 

 

 2.平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号の広大地判定フローチャート

 

平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号のフローチャートにおける検討内容について、以下のとおりとなれば「評基通24-4の広大地に該当する」と判断できます。

 

 

  •  「大規模工場用地に該当するか」         → 該当しない (No)
  •  「マンション適地か、又は、既にマンション等の敷地用地として開発を了しているか」                               → 適していない(No)
  •  「著しく地積が広大か」             → 広大である (YES)
  •  「公共公益的施設用地の負担が必要か」      → 必要である (YES)
  •    評基通24-4の「広大地」に該当

 

 

 3.2つの広大地判定フローチャートの違い

 

平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号の広大地フローチャートでは・・・・

「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているか」との表現がなされているのに対し

 

平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号の広大地フローチャートでは・・・・

 「マンション適地か、又は、既にマンション等の敷地用地として開発を了しているか」

との表現にかわっています。

 

一見同じ内容に思えますが・・・・

 

より国税庁の例示が具体的になったことの現れなのです!

特に、マンション適地か否かの判断について現場で混乱が発生したのです!

広大地の改正と同時期に平成16年情報が発表され、すぐ1年後には同様に平成17年情報が矢継ぎ早に公表されていることからも、当時の判断にはかなりのばらつきが見られたのです!

 

 

第3 広大地判定フローチャートを用いた具体的な判定

 

広大地判定フローチャートを具体的に考える前に、まずは広大地の定義及び適用3要件についておさらいしてみましょう!

 

 

 1.広大地の定義(財産評価基本通達24-4)

 

広大地とは・・・・・

 

 

  1.  その地域における
  2.  標準的な宅地の地積に比して
  3.  著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為
  4.    を行うとした場合に
  5.  公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいいます。
  6.  ただし、大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地
  7.    用地に適しているものは除く。

 

 

と定義されます。

 

⑤について平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号の広大地フローチャートでは 「マンション適地か、又は、既にマンション等の敷地用地として開発を了しているか」と表現されていることになります。

 

 

 2.「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているか」とは?

 

広大地の定義及び資産評価企画官情報並びに質疑応答事例によれば、マンション適地等として使用するのが最有効使用と認められるか否かの判断は、その土地の周辺地域の標準的使用の状況を参考に判断しなければならず、この場合の標準的使用とは、「その地域」で一般的な宅地の使用方法を意味します。

 

資産評価企画官情報並びに質疑応答事例におけるマンション適地に関連する部分を以下抜粋してみました。

 

 

(1)マンション適地の判定

 

いわゆるマンション適地等として使用するのが最有効使用と認められるか否かの判断は、その土地の周辺地域の標準的使用の状況を参考とする・・・

 

平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号から引用

 

 

 

(2)マンション適地の判定

 

評価しようとする土地が、課税時期においてマンション等の敷地でない場合、マンション等の敷地として使用するのが最有効使用と認められるかどうかの判定については、その土地の周辺地域の標準的使用の状況を参考とすることとなる・・・

 

平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号から引用

 

 

 

(3)中高層の集合住宅等の敷地に適しているもの

 

しかし、戸建住宅と中高層の集合住宅等が混在する地域(主に都市計画により指定された容積率(指定容積率)が200%以下の地域)にある場合には、最有効使用の判定が困難な場合もあることから、例えば、次のように「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」に該当すると判断できる場合を除いて、「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」には該当しないこととして差し支えありません。

 

ア その地域における用途地域・建ぺい率・容積率や地方公共団体の開発規制等が厳しくなく、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性(社会的・経済的・行政的見地)から判断して中高層の集合住宅等の敷地用地に適していると認められる場合

 

イ その地域に現に中高層の集合住宅等が建てられており、また、現在も建築工事中のものが多数ある場合、つまり、中高層の集合住宅等の敷地としての利用に地域が移行しつつある状態で、しかもその移行の程度が相当進んでいる場合

 

国税庁質疑応答事例「中高層の集合住宅等の敷地に適しているもの」から引用

 

 

 

(4)中高層の集合住宅等とは

 

 「中高層」には、原則として「地上階数3以上」のものが該当します。
また、「集合住宅等」には、分譲マンションのほか、賃貸マンション等も含まれます。

 

国税庁質疑応答事例「中高層の集合住宅等とは」から引用

 

 

 

(5)広大地に該当しないものの例示

 

対象地がその存する地域の標準的な画地との比較において広大地と判定される 画地であっても、一体利用することが市場の需給動向等を勘案して合理的と認められる場合には、・・・・その宅地を中高層の集合住宅等の敷地として使用するのが最有効使用である場合、いわゆるマンション適地等については広大地には該当しない旨を通達の中で明らかにした。

 

「広大地に該当するもの、しないもの」の条件を例示的に示すと、以下のようになる。

 

(広大地に該当しない条件の例示)

 

・現に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地

・現に宅地として有効利用さている建築物等の敷地(例えば、大規模店舗、ファミリーレストラン等)

 

平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号から引用

 

 

 

 3.マンション適地か否かの判定について

 

(1)既に評価対象地がマンション等の敷地用地として開発を了している場合

 

 既に評価対象地がマンション等の敷地用地として開発を了している場合には、たとえ評価対象地の地積が広大で地域の標準的な画地との比較において広大地と判定される画地であっても、一体利用することが市場の需給動向等を勘案して合理的と認められる場合には、広大地に該当しません。

 

平成16年6月29日付資産評価企画官情報第2号において「既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地」については広大地に該当しない旨の例示があり、平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号では前述の内容がフローチャートで例示されています。

 

また、質疑応答事例において「中高層」には、原則として「地上階数3以上」のものが該当すること及び「集合住宅等」には、分譲マンションのほか、賃貸マンション等が含まれるれることが新たに統一見解として公表されました。

 

従って、仮に、評価対象地が課税時期において既に地上3階の中高層集合住宅(賃貸マンション)として開発を了している場合には、そもそも「著しく地積が広大」といえるか否かの判断を待たずして広大地には該当しないと言えるのです。

 

 

 

(2)税時時期において更地や雑種地等であり、マンション等の敷地として利用されていない場合

 

 広大地の定義及び資産評価企画官情報並びに質疑応答事例によれば、評価対象地が、課税時期において更地や雑種地等であり、マンション等の敷地として利用されていない場合には、「その地域」の標準的使用の状況を参考に、当該評価対象地がマンション適地等として使用するのが最有効使用と認められるか否かの判断を行うことになります。

 

 

 

(3)標準的使用及び最有効使用の判定が困難な場合の判断基準

 

評価対象地の存する「その地域」の指定容積率が200%であり、最有効使用の判定が困難な場合には、原則マンション適地に該当しない、すなわち相手方の主張に沿った展開となってしまいます。

 

もし、税理士先生自身が明らかに広大地に該当しないマンション適地と思われる土地についてまで、広大地を適用しなかった(忘れたのでは?)と訴えられてトラブルとなった場合に一番苦慮するのが・・・・・

 

評価対象地が「マンション適地」であったことを証明する必要がある場合なのです!

 

 

評価対象地が「明らかにマンション適地と認められ、そもそも広大地に該当しない」と立証するには以下の2点に合致することを証明する必要があります!

 

 

 【その1】

 

「その地域」における用途地域・建ぺい率・容積率や地方公共団体の開発規制等が厳しくなく、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性(社会的・経済的・行政的見地)から判断して中高層の集合住宅等の敷地用地に適していると認められることを立証する必要があります。

 

すなわち、評価対象地の用途地域等の条件により「何階程度の中高層のマンションが建築できるのか?」具体的に裁判官に図示する手法が有効です。これは後述により詳しく書いてみます。

 

 

 【その2】

 

「その地域に現に中高層の集合住宅等が建てられており、また、現在も建築工事中のものが多数ある場合、つまり、中高層の集合住宅等の敷地としての利用に地域が移行しつつある状態で、しかもその移行の程度が相当進んでいる場合」であったと立証する必要があります。

これは評価時点以前からの中高層の集合住宅の増加推移を立証することになります。

ここでは、やはり不動産鑑定士の技量に大きく左右されるポイントです。

 

 

 

第4 容積率と建築可能な建物の高さの関係

 

前記 3(3)【その1】では「用途地域・建ぺい率・容積率や地方公共団体の開発規制等が厳しくなく、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性(社会的・経済的・行政的見地)から判断して中高層の集合住宅等の敷地用地に適している」ことを立証する必要があると書きました。

 

では、評価対象地の用途地域と容積率でどの程度のマンションが建築可能なのかを空間CADにより精査して、より中高層の建物が建築可能なのか調べてみましょう!

その具体的な調査方法として地積が1,000㎡で東側6.0m幅員の道路に接面する評価対象地を所与として、用途地域、建ぺい率の条件が異なると建築可能な空間の範囲がどの程度影響を受けるのかを調べてみました・・・・

 

問題となっている評価対象地の用途地域、容積率などに応じて建築可能な共同住宅の高さを検証し、評価対象地が「明らかにマンション適地と認められ、そもそも広大地に該当しない」と立証する必要があるのです!

 

 

 1.第一種低層住居専用地域(容積率80%)のケース

 

評価対象地の地積 : 1,000㎡

前面道路幅員   : 6.0mで東側接面

用 途 地 域  : 第一種低層住居専用地域

建 ぺ い 率  : 40%

容  積  率    : 80%

 

 

想定敷地(共同住宅)1低

 

 

 

 2.第一種中高層住居専用地域(容積率150%)のケース

 

評価対象地の地積 : 1,000㎡

前面道路幅員   : 6.0mで東側接面

用 途 地 域  : 第一種中高層住居専用地域

建 ぺ い 率  : 50%

容  積  率    : 150%

 

 想定敷地(共同住宅)1中高

 

 

 

 3.第一種住居地域(容積率200%)のケース

評価対象地の地積 : 1,000㎡

前面道路幅員   : 6.0mで東側接面

用 途 地 域  : 第一種住居地域

建 ぺ い 率  : 60%

容  積  率    : 200%

 

 

 

想定敷地(共同住宅)1住

 

 

 

 

 4.商業地域(容積率500%)のケース

 

 

評価対象地の地積 : 1,000㎡

前面道路幅員   : 6.0mで東側接面

用 途 地 域  : 商業地域

建 ぺ い 率  : 80%

容  積  率    : 500%

 想定敷地(共同住宅)商業

 

 

 

第5 目次

 

 

  1. 1  広大地に関する紛争当事者となった場合の留意点
  2. 2  紛争が多発する広大地判定の歴史と沿革
  3. 3  近年多発する広大地をめぐるトラブル
  1. 4  あらためて広大地適用の3要件について考えてみる
  2. 5  広大地判定に不可欠な開発行為への理解
  3. 6  広大地判定フローチャートとマンション適地の判定(本稿)
  4. 7  相手方の広大地判定に関する意見書は恐れるに足らず!

 

 

 

 

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知っておきたい広大地のキーポイント その1 広大地に関する紛争当事者となった場合の留意点
知っておきたい広大地のキーポイント その2 紛争が多発する広大地判定の歴史と沿革
知っておきたい広大地のキーポイント その3 近年多発する広大地をめぐるトラブル
知っておきたい広大地のキーポイント その4 あらためて広大地適用の3要件について考えてみる
知っておきたい広大地のキーポイント その5 広大地判定に不可欠な開発行為への理解
知っておきたい広大地のキーポイント その6 広大地判定フローチャートとマンション適地の判定
知っておきたい広大地のキーポイント その7 相手方の広大地判定に関する意見書は恐れるに足らず!

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